ガイアフロー静岡蒸留所は、2017年に蒸留を始めたばかりの、新しい蒸留所です。最初のシングルモルトウイスキー「プロローグK」が2020年末に発売されました。シングルモルトというのは、モルト(大麦の麦芽)を原料とし、最低3年、樽熟成をおこなったウイスキーを指します。プロローグKは入手困難で、メルマガ会員限定の抽選にも参加しましたが、外れてしまい、残念でした。
静岡県に出張で来ていることもあり、見学に行くことにしました。
良い機会なので、ウイスキーの製造工程をご紹介します。
サイロに貯められた大麦麦芽は、セパレータにより異物除去され、モルトミルにより粉砕されます。
ステンレスのマッシュタン(糖化槽)にこの砕いた麦芽とお湯を入れ、撹拌後、1時間ほど寝かせます。そうするとデンプンがブドウ糖に分解してお湯に溶け込み、麦汁ができるので、濾過してタンクに移します。
それを木製の発酵槽に移し、ウイスキー専用酵母を投入し、発酵をおこないます。木製というのは、オレゴンパインと静岡杉、2つのものが使われているとのことでした。
発酵は、当初はそのウイスキー専用酵母により7~8%のアルコール濃度まで進み、その後は、桶の内側に付着した乳酸菌による乳酸発酵が始まります。この「もろみ」の状態は約3日間で完了します。
その後、初留と言って、1回目の蒸留がおこなわれます。最初のシングルモルト「プロローグK」は、初留をこのポットスチル(蒸留器)で作りました。これは、旧メルシャンの軽井沢蒸留所で使われていた蒸留器を受け継いだものです。プロローグKの「K」は軽井沢のKを指しています。
この他にも、初留のためのポットスチルがあり、それは世界唯一の薪釜だとのことです(下の画像左側)。
初留により得られたアルコール濃度20~30%の「ローワイン」と呼ばれる液体は、タンクに貯められ、次に再留釜(上の画像右奥)に入れられ、最終的にアルコール濃度70%まで高められた液体になります。液体を捕集する際には、ミドルカットといって、最初と最後の雑味のある部分を除去します。こうして、「ニューメイク」と言われる、アウトプットが得られます。
ニューメイクは樽の成分を最も良く引き出す割合63.8%まで加水され、主に220リットルのバーボン樽に詰められます。
貯蔵庫は、敢えて、温度変化が大きくなるように断熱なしで設計したとのことです。
すごくおもしろかったです。
見学後には、有料試飲をしました。
まずは、軽井沢蒸留所釜のニューメイクを試飲しました。
穀物のほっこりした甘み、渋味、ヨード香、海藻味が感じられました。
次に、プロローグKも試飲しました。
甘いエステル香、フルーツ、樽香の苦み、ほっこりとしたウエハースのような香ばしさ、森の香りが感じられました。若い酒だけどすごくおいしいかったです。
以上で見学は終わりました。随所に静岡らしさを取り入れ、個性的なウイスキー作りに取り組んでいることが分かりました。将来に期待したいと思います。
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